民泊の騒音対策はセンサーで:録音せずdBだけ測るAirbnb規約内の設置法

騒音センサーは、音声を録音せず、音量(dB)と続いた時間だけを測る機器を選びます。置くのはリビングなどの共有部だけにして、設置していることをリスティングで開示すれば、Airbnbの規約の範囲で使えます。寝室・浴室・就寝エリアには置けません。通知のしきい値は最初から決めず、1ヶ月ほど平常時の音を測ってから「普段よりどれだけ大きい音が、何分続いたら通知するか」で決めます。
センサーで防げるのは、騒音に気づくのが遅れることです。騒音そのものは止められません。気づいたあとに誰がどう動くかまで決めておいて、はじめて近所からの苦情を減らす道具になります。
私たちNNiNNは鴨川で貸別荘を3施設運営していて、自社施設向けに騒音検知の仕組みを設計しています。自社施設での計測はまだ始めていないため、この記事で扱うのは実測の結果ではありません。設計の考え方と判断基準です。
Airbnbの規約: 置ける場所・置けない場所
Airbnbの防犯・監視機器ポリシーは2024年4月30日に施行されました。私たちは設計の前に、公式ヘルプの原文を確認しました。騒音対策に関係する部分を表にまとめます。
| 機器 | 置ける場所 | 置けない場所 | 開示 | 音声の録音 |
|---|---|---|---|---|
| 騒音計(騒音レベルと持続時間だけを測るもの) | 屋内の共有部 | 寝室・バスルーム・就寝エリア | 必須。具体的な設置場所までは書かなくてよい | 不可(録音しないことが条件) |
| カメラ・録音機器 | ― | 屋内のすべての場所(廊下・リビングも含む)。電源を切っていても不可 | ― | ― |
| 屋外カメラ | 屋外 | ― | 設置場所をリスティングに書けば可 | ― |
| 隠しカメラ | どこにも置けない | すべての場所 | ― | ― |
| スマートホーム機器 | 設置可 | ― | 推奨(必須ではない) | ― |
スマートホーム機器は、ゲストが電源を抜いたり無効にしたりできるようにしておくことも推奨されています。
例外が1つあります。日本で旅館業の許可を持つ施設では、屋内玄関だけを映すカメラの設置が義務になる場合があります。この場合もカメラの開示は必要で、音声は録音できません。民泊新法(住宅宿泊事業法)で届け出ている施設には、この例外は当てはまりません。
機器は「録音しない」ことを基準に選ぶ
私たちは、機能や価格を比べる前に次の3つを決めました。
- 録音しない
- 測るのは音量(dB)だけ
- 置くのは共有部だけ
機器はこの3つを満たすものの中から選びます。先に機器を選ぶと、「録音もできるが設定で切ってある」といった、ゲストに説明しにくい構成になりがちです。候補の機器は、次のチェックリストで確認してください。
- [ ] 音声を保存しない。外部にも送信しない
- [ ] 出力するのは音量と、その音が続いた時間だけ
- [ ] 「録音していません」とゲストに一言で説明できる仕様である
- [ ] 通知のしきい値と、何分続いたら通知するかを自分で設定できる
- [ ] 時間帯ごとの記録を、あとから見返せる
- [ ] 寝室・浴室の外(リビング・ダイニングなど人が集まる場所)に置いても役に立つ
何dBで通知する? まず1ヶ月、平常時の音を測る
「何dBで通知すればよいか」には、どの宿にも当てはまる答えがありません。理由は2つあります。
1つ目は、機器が表示する「dB」の基準が機器ごとに違うことです。たとえば自作センサーでよく使われる ESPHomeの騒音レベル機能 は、そのマイクで測れる最大の音を0dBとして、そこからの相対値を出します。騒音計が出す音圧レベルとは別物で、公式ドキュメントにも校正の方法は書かれていません。市販品でも、表示される数字をほかの機器の数字とそのまま比べることはできません。
2つ目は、宿ごとに「普段の音」が違うことです。鴨川の海沿いの貸別荘なら、波の音が一晩中聞こえます。夏は虫の声、エアコンの室外機、近くの道路の音も加わります。静かな山あいの宿と同じしきい値を使えば、通知が鳴りっぱなしになるか、まったく鳴らないかのどちらかです。
環境基準の「45dB」と比べない
騒音に係る環境基準では、住居系の地域は昼55dB以下・夜45dB以下(夜間は22時〜6時)とされています。ただし、これは行政が目指す目標値で、規制値ではありません。センサーの基準もそろっていないので、「センサーが45dBを超えたから違反」とは言えません。環境基準から借りて使えるのは、「22時〜6時を夜として分けて見る」という時間帯の区切りです。
しきい値を決める手順
| 段階 | 期間 | 見る値 | 決め方 |
|---|---|---|---|
| 1. 設置 | 初日 | 置き場所 | 人が集まる共有部に置く。寝室・浴室には置かない |
| 2. 平常時の記録 | 約1ヶ月 | 時間帯ごとの平均値とピーク値 | 空室の日と、普通の滞在がある日の両方を記録する |
| 3. 平常値を読む | 記録のあと | 昼と夜(22時〜6時)それぞれの普段の範囲 | 波・虫・空調など、その宿の「いつもの音」の幅をつかむ |
| 4. しきい値を決める | ― | 平常値からの上がり幅と、続いた時間 | 「夜間に、普段の範囲を大きく超える音が何分続いたら通知」と2つの条件で決める |
| 5. 見直し | 季節の変わり目 | 平常値の変化 | 虫の季節や冷暖房の時期に合わせて調整する |
続いた時間を条件に入れるのは、ドアを閉める音や食器の音のような一瞬のピークで通知しないためです。近所の迷惑になるのは、大きな音が一定時間続く状態です。
寝室は音ではなくCO2で人数超過を見る
寝室には騒音計を置けません。一方で、パーティーや無断の追加宿泊は、寝室に人が集まったり寝たりすることで起きます。そこで私たちは、寝室にCO2センサーを置いて、人数の多さに気づく設計を考えています。人が多い部屋ほどCO2は上がりやすいので、音でもカメラでもない方法で「予約人数より多そうだ」という兆しをつかめます。
ただし、これは設計案です。換気の状態にも左右されるため、どこまでの精度で人数超過を見分けられるかは確かめられていません。そのため、CO2の値を理由にゲストを問い詰めるのではなく、「状況を確認するメッセージを送るきっかけ」として使うのが妥当です。
規約との関係も整理しておきます。Airbnbのポリシーには、CO2センサーについての記述がありません。書かれていない以上、「規約違反ではない」と言い切ることはできません。CO2センサーを置く場合は、スマートホーム機器の扱い(開示は推奨)に合わせて、リスティングで開示しておくのが安全です。そのとき「音声・映像は記録しない、空気の状態を測るセンサーである」と書き添えます。
通知が来たら: 法第9条の説明とつなぐ
民泊新法の第9条では、住宅宿泊事業者は騒音防止・ごみ・火災などについて宿泊者に説明しなければなりません。外国人の宿泊者には外国語で説明します。国のガイドラインは、騒音防止の例として次の4つを挙げています。
- 大声での会話を控える
- 深夜は窓を閉める
- バルコニーなど屋外で宴会をしない
- 楽器を使わない
事業者は、苦情に適切かつ迅速に対応する必要があります。苦情が多いのに説明で対応しない場合は、業務改善命令の対象になります。家主不在型の施設は、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。
センサーは、この「事前の説明」と「迅速な対応」の間をつなぐ位置に置きます。通知を受けてからの動きを、段階ごとに決めておきます。
| 段階 | タイミング | やること | ポイント |
|---|---|---|---|
| 0. 事前説明 | 予約確定〜チェックイン | 上の4項目をハウスルールとチェックイン案内で伝える(外国語も用意) | 法第9条の義務。センサーの有無にかかわらず必要 |
| 1. 自動メッセージ | しきい値を超えたとき | 丁寧な定型文で、音量を下げるようお願いする | 責める文面にしない。深夜は窓を閉めるよう添える |
| 2. 電話 | メッセージのあとも続くとき | 直接話して状況を確認する | 誰が電話をかけるかを決めておく |
| 3. 駆けつけ | 電話がつながらない、または改善しないとき | 現地で対応する | 家主不在型では管理業者と手順をすり合わせておく |
自動メッセージの例:
夜分に失礼します。お部屋の音量が大きくなっているようです。近隣は住宅地のため、22時以降は窓を閉め、お声を控えめにしていただけますと助かります。
Hello, we’ve noticed the noise level in the property is quite high. As there are homes nearby, please close the windows and keep voices down after 10 p.m. Thank you for your understanding.
センサーの記録には、いつ・どのくらいの時間、音が大きかったかが残ります。近所の方から問い合わせがあったとき、状況を説明する材料になります。
参考: 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)、住宅宿泊事業法(e-Gov)
開示文の書き方
騒音計の開示はAirbnbで必須です。具体的な設置場所までは書かなくてかまいません。それでも「寝室・浴室には置いていない」「録音していない」と書いておくと、ゲストは安心できます。CO2センサーを置く場合は、同じ文の中で開示します。
日本語の例:
本施設では、近隣への配慮のため、共用スペースに騒音センサーを設置しています。センサーは音の大きさ(dB)と継続時間のみを測定し、会話などの音声は録音しません。寝室・浴室には設置していません。一定以上の音が続いた場合は、ホストからメッセージでご連絡します。
また、寝室には室内の空気の状態(CO2濃度)を測るセンサーを設置しています。音声・映像は記録しません。
英語の例:
For the comfort of our neighbors, a noise-monitoring device is installed in the common area. It measures only sound levels (dB) and duration, and does not record any audio or conversations. There are no noise monitors in the bedrooms or bathrooms. If elevated noise continues, the host will contact you by message.
The bedrooms have an air-quality sensor that measures CO2 levels. It does not record audio or video.
開示文とハウスルール(法第9条の説明)は、同じ場所に並べて載せると伝わりやすくなります。「何をしてほしいか」と「なぜ測っているか」が一度に読めるからです。
ご相談について
NNiNNでは、自社の貸別荘で考えた設計をもとに、宿泊施設向けのセンサーの選定・設置・通知の設定をお手伝いしています。規約を守りながら騒音対策を入れたい方は、スマートホーム導入 をご覧のうえ、お問い合わせ からお気軽にご相談ください。


